指サック

仕事を終え、会社を出ようとした時、前を歩いてる女性が何か小さなものを落とした。
拾い上げてみると指サックだった。
こんなものの為に呼び止めるのもなんだか気が引けたが、せっかく拾ったんだし渡すのが筋だ。
前行く人に声をかけ、指サックを渡した。
「あ!大事な指サックなんです。ありがとうございます」と感謝された。
驚いた。
この世に「大事な指サック」というものがあることに驚いた。
親の形見か配偶者、恋人のプレゼントかもしれない。
少なくとも言える事ははきれいな指サックであったことだ。
何のプレゼントか知らないがきっとこんな物をプレゼントとして渡すなんて私のことを舐めてらっしゃるのかしらつって別れたんだけど、やっぱり忘れられなくてとか言ってるうちになんか彼は死んじゃって、あとに残ったのは悲しみと彼との思いでと指サックだけみたいな。
それなら頷ける。
というかその理由しか考えられない。
そうに決まってる。