奇界遺産

昨年僕が最も面白く読んだ、というか見た本は『奇界遺産』というタイトルの写真集だ。
この写真集は世界中の奇怪な人工物、風習、人物を詰め込んだ一冊である。
そのタイトルに恥ない奇っ怪な写真がA4の大版で次々と網膜に叩きつけられる。
洞窟の中の町とか男根崇拝がハンパなくて家々の壁に男根の絵があしらってある村とか地獄を再現したテーマパーク(それもえらくクオリティの低い)とかUFOの目撃数が世界一の町等々。
ちなみに表紙にもなっているあの像はベトナムの建国の祖が象られた物らしく、何でも国営公園の中にあるそうな。
とまぁ、とにかくもうあまりに気が狂ったようなものが連発されるため、途中からは狂ってない状態がなんなのかわからなくなってくるという有様。


この写真を撮った佐藤健寿という人物は一体何者なのか。
写真家にしてオカルト研究家という怪しげな肩書き。
彼の主宰するウェブサイト『X51.ORG』は以前から結構な人気だそうだ。
要するにオカルト研究で世界を飛び回るのと各地の奇界遺産を見て回る事は氏にとってはシームレスな事なのだろう。


この写真集で一番印象に残ったのは佐藤氏によるあとがきの中の一文だ。
本が今手元に無いので、正確に引用できないが、大意としては、この狂った物の存在が許されているこの世界はやはり狂っているのだ、と。
なんかだいぶニュアンスが変わってしまったような気がするが、大体こんな感じの事を言っていた。
なんせこんな狂った本が図書館で借りられるのだから。
ちなみにその思いをさらに強くしたのはふと立ち寄った書店での事だった。

やはりこの世界は狂っているのだ。