の、ようなもの

嫁がたまにラタトゥイユというものを作ってくれる。
ズッキーニとかカボチャとか玉ねぎとかの野菜をトマトまみれにして煮た奴だ。
で、この中にセロリも入るのだが、セロリがどうにも主張が強い。
ただのすじのくせしてラタトゥイユはえらく存在感があるのだ。
しかしいかんせんすじなのであんまり味も無いし、他の野菜程柔らかくならないので、ちょっと食べにくい。
これは嫁も同意見らしく合意の上、セロリを入れずにラタトゥイユを作ってもらった。
すると予想通り非常に食べやすい。
トマトとそれぞれの野菜の味が存分に味わえる。
だが非常に違和感があった。
果たしてこれはラタトゥイユと呼べるのか?
セロリのあの食感と無機質な味わいがラタトゥイユだったのではないか?
そう感じたら最後、今食べている物はラタトゥイユのようなものとしか思えなくなってしまった。
もし俺がこれを食べ終わった直後に犯罪を犯したら、「容疑者はラタトゥイユのようなものを食べ、逃走中です」と報道される事だろう。


蛇足だが、ラタトゥイユは一体いつから我々の食卓に普通の顔をして並んでいるのだろうか。
エリンギの先輩なのか後輩なのか、皆目検討がつかない。