自治会良いとこ一度はおいで

今住んでるとこは団地、それもUR(UNDERGROUND RESISTANCE)が管理するとこで一昔前の言い方をすると、公団住宅ってやつだ。
マイケルジャクソンが死んだ日に引越したのだが、早くも自治会の仕事が回ってきた。
自分にも自治会の仕事などというものが回ってきたかと思うと驚きというか、もうなんか変な気分である。
先日はその自治会の総会が開かれるという事で集会所に足を運んだ。
出席者は約50人、その大半がご老人である。
この団地は今でこそ8階建てのわりと立派なとこだが、ここ数年で建て替えたもので、それまではよくある古き良き(?)公団住宅だった。
建て替えに伴い、旧居住者は優先的に入居しているので、団地全体でご老人が非常に多いのである。
なのでこの状況は想定内。
ギリギリに行ったせいで一番前に座る羽目になったのは想定外だったが。


会は主に会長、副会長、議長(この会議限定の司会進行役)が進行する。
まず昨年の活動の総括が行われるが、基本的には配布された資料を読んどいてくださいという調子だった。
その次は会計報告だったが、担当の人は各項目の予算と決算の数字を全て読み上げていた。
危うく寝るところだった。
油断ならない会議だ。


終了後、質疑応答が行われ、一人の老女が手を挙げた。
「あたくし、震災の時は新潟に行っておりまして、出が新潟なものですから、帰っていたわけですけども、向こうで地震に遭いまして、なかなか帰って来れませんでやっと帰って来れたら、部屋がめちゃくちゃでございましょ?」てな具合で喋り自体は明瞭なのだが、内容が行ったり来たりする上に一向に本題らしき話が出てこないので、とにかく何が言いたいのかわからない。
これはやっかいな事になりそうな…。
「…で、色んな所で義援金を送るという事になっていますが、自治会では待てど暮らせどそういった話は出て来ませんが、そのへんはどうなっているんでしょうか。それからね、自治会で発行しているミニニュースなんですけど、詳しくはインターネットですか?あれを見るようにという風になっていますが、この団地の住民の2/3は65歳以上なわけです。という事はそれを見るのは不可能ですので、もっと老人の目線にたった広報をやっていただきたい。それから先日市役所の方で◯◯市◯◯協議会というのに出席したんですけども、そこには憲法についての勉強会のようなものがあってそれが素晴らしい内容なんです。」
一体この人は何を言っているのか。
それでも議長(40代後半の男性)は冷静にポイントを捉え、「つまり義援金の件とミニニュースの件と憲法の勉強…」と言っているそばから、議長の発言を遮ってまたさっきと同じ話をするばかりか「私、社会保険労務士の資格を」とか「NPOを立ち上げようと」とか益々脱線している。
それを更に議長が遮るという朝生的な展開を経て、なんとか議長はポイントを整理、会長にふった。
会長からまず義援金について回答。
色々考えたけど、各自に任せるという事にしたらしい。
ミニニュースに関しては「えー、まず我々幹部連中もですね、インターネットには滅法弱くてですね、よくわからないので、その辺は自然と老人の目線にたった広報になっていると思うんですが・・・。」
僕はさもありなんと心の中で膝を打ちつつ、話を聞いていた。
「ただもしかしたらそのお話は地震の後の事ですかね、正確な情報というのがなかったものですから、やむを得ずですがインターネットのアドレスを書いた次第です。」
これに対し老女は団地の住民の2/3は65歳以上なのでもっと老人の目線にたった広報をというくだりを繰り返し、最後に「情報はラジオが正確です」と締めくくった。
場内には失笑が漏れていたが、僕は人目も憚らず爆笑してしまった。
あんたあんだけ熱っぽく語っといてその結論じゃ、ミニニュースなんて無くてもいいって言ってるようなもんじゃねぇかよ!


気を取り直して今年度の役員の改選に移ろう。
別に投票とかは無くて、大体やる人は事前の打合せで決まってるっぽい。
スムーズに決まっていくが、その最後に会計監査になった人が発言を求めた。
「私長いこと会計監査をやらせていただいているんですが、もうそろそろ歳もありまして・・・細かい数字はちょっと怪しいんですね。白内障緑内障もありまして・・・。それで5年くらい前から会長には、そろそろ代わりの人を、という話をしているんですが、それもなしのつぶてで・・・」と弱々しくもしかし決然とした調子で陳情した。
会長もこれには弱り果てており、見かねた他の役員がフォロー。
「誰か他にやっていただけるという方はいらっしゃいませんか・・・。○○さんなんかいかがでしょう」と、まさかの知り合いへのノールックパス。
こんな場でふられて断るわけにもいかず、新会計監査は決まった。


続いて活動計画。
まず副会長からゴーヤー栽培による緑のカーテン計画の説明と竹林の土を入れ替えた事の説明。
ゴーヤーは「あまり好きではない」という理由で至極あっさりした説明だったが、竹林のほうは「土を入れ替えたので、今年こそ筍が食べられるはず!」と興奮気味に語っていた。
そうそう、こういうのを待っていたのだ。
それでこそ自治会!


続いて予算。
やはり全ての項目が読み上げられもう限界。
もうすぐ終わりだと、思っていたが最後の質疑応答でまたもやさっきの老女が!発言を求めている!
「前年度の繰越金の実績と比べると今年度の繰越金の予算が減っていますが、このままでよろしいんですか?お金がなければ、会員を増やすような事もできませんし、魅力的な自治会は云々・・」
魅力的な自治会って一体なんだ・・。
何をやると自治会員は増えるっていうんだ・・・。
そして「私、社会保険労務士の資格を」とか「NPOを立ち上げようと」ともう3回くらい聞いた話をまたし、挙句の果てには「自治会にボランティアで協力します!」と決意を表明していた。
「ボランティア」って、自治会の役員の人はその活動で報酬を得ているのか(得てるのかもしれないけど、可能性は低い)?
役員になりたいならなりたいって言えば多分簡単になれると思うんだよね。
だって俺勧誘されたし、副会長に。
「やっぱり若いやつがいねぇとさー」みたいな感じだったけど、そうですねー、かなんか言ってそそくさと帰った。
だってそもそも活動の大きな柱が家賃アップの凍結なわけだけど、継続して住んでる人は家賃安くて僕らみたいに後から入った人は市場価格並みなのよね。
ということは利害は相反しはしないけど、一致はしないし。
これで自治会の役員やるとかなったら、よっぽどのお人よしか、ご老人達の微妙な関係性に萌えるとかそういう人生の大先輩を馬鹿にした感じの嗜好でもなければやらないよ!