僕の勤める会社の社内報が凄すぎた

僕の勤める会社は一昨年創立60周年を迎えた。
それを記念して、1956年当時の社内報が復刻されたのだが、これがなかなか凄かった。
恐らくこういうのをカルチャーショックというのであろう。
全体としては戦後すぐの創立時はとにかく混乱してて大変だったよみたいな内容。
しかし最後のページに四方山話的なページがあった。
最もインパクトがあったものを以下に引用する。

『戦友』
「失礼ですがKさんでは・・・」浅川行の電車がホームをすべり出すとまもなく横合いから声をかけられた。余り咄嗟のことで、戦友T氏だとはどうしても思い出せず、どぎまぎしていると、先方は「ああやつぱりそうでしたか。Tですよ・・・」とテレて頭をかいた。
終戦のあわただしさの中にお互いはどうなるものとも見当がつかず、挨拶もそこそこに別れてしまったのだが・・・もう十年の月日は流れていたのである。
電車が代々木の駅を出ると、上手に新宿のきらびやかなネオンの明滅が見えてくる。T氏は今までの会話をやめて「随分変わりましたね。あのネオンのまたたきは、さながら世の無常を語っているようですね」としみじみといつた。その言葉には実感がこもつており、彼は感無量に堪えないといつた表情でその明滅を眺めていた。
私は、子供に土産を買つて帰る約束をしてきたことを彼につげ再会を約して新宿のホームに降りた。
上衣のポケットにそつと手をやつて給料袋を確かめた。と一瞬冷汗が背筋を流れた。給料袋の感じがないのである。「さてはやられたか」としばし呆然としたあと、よく考えてみるとズボンのポケットに入れていたことを思い出した。ホツと安堵しつつも習慣の不覚に苦笑する。子供にも土産をたんまり買つて意気揚々として家路を急いだ。