開沼博『「フクシマ」論 原子力ムラはなぜ生まれたのか』

この本の特筆すべき所は原発を受け入れる側の意思に焦点を当てている事だ。
とかく国が強引に押し付けた、という風に語られがちだが、立地自治体が積極的に誘致を図って来たという事実を明治維新以降の福島の通史から読み解いている。
その動機はもちろん金であり、より正確に言えば貧困からの脱却、郷土の発展のため。
こうした構図は原発に限らず、全国のダムだとか米軍基地だとかのいわゆる「迷惑施設」にも当てはまる事だと著者は主張する。
そして実際自治体レベルだけじゃなく、住民にも職が生まれ、県内でも所得の低かった浜通り地区は豊かになった。
だから原発立地自治体は原発を簡単には手放せない。
この事実を理解していないと先の選挙の結果を正当に評価できないし、デモをやるにしても外野が騒いでるだけになってしまう。
なのでこれを読んだ今、脱原発というある種の夢から覚めたような気分だ。
念の為付け加えておくが、本書は上記の事から原発は日本に無くてはならない物だ、とかそういう主張はしていないので、悪しからず。
夢から覚めただけで諦めてはいない。