この際、一度鬼ババになってみようのコーナー

先日、出勤時に駅近くの交差点の手前に差し掛かったところで、突然「ちょっとあんた!そこ駐輪禁止だよ!」という女性の大きな声が聞こえた。
声の方を見てみると注意されたと思しき別の女性が渋々自転車のスタンドを上げ、立ち去ろうとしており、その先に声の主と思われる女性が立っていた。
注意したほうの女性は齢40過ぎ、赤く染めた髪を後ろで一つに束ねた小柄な人で、顔には怒りの色が表れていた。
赤い髪に拠るところが大きいと思われるが、印象としては「鬼ババ」であった。
僕は同じ歩調のまま交差点に近づいていくと、「鬼ババ」の横には涙を流した高校生くらいの女性が立っていた。
どういう事なのだと思いながらも決して時間に余裕があるわけでもないので、その場はやり過ごしたのだが、
・不法駐輪を厳しくとがめる。
・「鬼ババ」
・泣いている女子高生
という状況だけをみたら、これすなわち「鬼ババ」が女子高生を注意し、泣かせたと思ってしまってもしょうがないかもしれない。
というかそう思った。
仮に俺が早合点で、正義感の強い人間だったら、「鬼ババ」に対して、「なにもか弱い女の子を泣かせる事は無いじゃないか!」とか言っていたかもしれない。
しかし翌日その交差点には女子高生と警察官が立っており、そしてその横のマンションから出てきた「鬼ババ」は女子高生に笑顔で挨拶していた。
さらにその翌日には目撃情報を求む旨の立て看板が立っていた。
恐らくはつまり、自転車で交差点を渡ろうとした女子高生に他の自転車が激突し、女子高生は負傷、「鬼ババ」が介抱していた所へ不法駐輪人物が現れ、そこに俺が通りがかったというわけだ。
なんて良い人なんだ。「鬼ババ」だなんて思って本当にすいませんでした。
人を見た目だけで判断しては不都合があるし、俺の正義感が半端なもので良かった。
正義感なんてクソくらえだ。