壊れかけのRadiohead...

その日はいつものような物憂い月曜だった。
このところ暇があった仕事もそろそろ忙しさを増しそうな気配があったことも一層俺の気をふさぐ要因となっていた。

課の朝礼で歯科検診があったのを思い出した。
危ないところだった。
矯正歯科に(勝手に)行かなくなってからこの方、口腔衛生には疎くなっている。
去年などは虫歯が2つも見つかって肝を冷やしたものだ。
その虫歯は昨年度中に治療した。
現在の状況を知る上では絶好の機会である。

時間になったので、会場へ向かう。
一通り診察を受けたが、どうやら新たな虫歯はないようだ。診察が終わると歯科助手の方による歯ブラシ指導である。
白い制服に身を包んだ歯科助手に言われるがままに前歯を磨いた。
磨き方のチェックだ。
俺はいつものように毛先を歯の根元に当て小刻みにブラッシングした。
すると妙齢の歯科助手は言った。
「ああ、確かに細かく磨くのが具合が良いのですが、あなたのそれはいかにも細かすぎます。
あたかもポリネシアンセックスかの如くです。」
!?
俺は思わず吹き出しの外にエクスクラメーションマークとクエスションマーク飛び出させてしまった。
そう、まるでマガジンのマンガのように。
あのエクスクラメーションマークは誰の感情を表しているのだろうか、読者か?などと考える暇も無く、身長150cmちょっとの歯科助手は二の句を継いだ。
「変な歩き方してたと思ったら、今度はポリネシアンですものねぇ。したたかというかやり手というか、そう思いません?」
「はぁ・・・」と、先程の文語調(?)とは打って変わって砕けた口調になった白いサンダルを履いた歯科助手の問い掛けに俺は気のない返事をした。
そもそもこの一時間もしたら顔も忘れてしまうだろう歯科助手の話から察するに、デューク更家とアダム徳永を混同しているのだろう。
うすた京介ヘレン・ケラーナイチンゲールを混同していた。
それにしてもポリネシアンセックスってなんだ。