免許センターの話

高校を卒業した春休み、僕は神奈川厚木にキャンパスのある大学への進学が決まっていた。
埼玉入間から往復5時間はまじで勘弁してと、親に泣き付いて一人暮らしさせてもらったはいいもののいかんせんすげー山の中で、この坂自転車で登るのシャカリキかよって感じだったので、原付の免許をとる事にした。
埼玉県出身の方々ならよく御存じかと思うが、運転免許と言えば鴻巣である。
狙ったのか知らないが、埼玉県の真ん中辺(よりちょっと北?)にあるこの都市は一部を除き埼玉県民の呪詛の的になっているのである*1
入間という県西部の都市から鴻巣などという真ん中辺の所へ行くには大変な迂回をせねばならず、想像しただけでやってられない。
しかし何事も世の中悪い事ばかりではなくて、川越から鴻巣までバスが出ているらしい。
というかバスはむしろおまけで駅前に筆記試験の予備校みたいなとこがあるらしいと既に免許を持ってる奴から聞いていて、そこが出してるバスに乗って行こうという算段であった。
友達と本川越で待ち合わせ、指定された場所に行くと、果たしてそこには20人乗りくらいの白いマイクロバスが止まっていて、横っ腹には「ウルトラ」という文字が入っていた。
友人と顔を見合わせ僕らは異口同音に、怪しい、怪しすぎる、と言った。
このウルトラというのは略称でもウルトラ○○でもなんとかのウルトラでもなく、本当にただのウルトラであった*2
実際そのバスのたどり着いた鴻巣駅前の建物には「ウルトラ」とだけ書かれた看板が掲げられていた*3
怪しすぎる、と僕達はまたお互いを見合ってそう言った。
中に入ると椅子、そして天井からぶら下がるヘッドホン、机は無かったと記憶しているが、その様子はさしずめ酸素マスクを下ろした緊急時の旅客機といった感じだった。


問題は3パターンあり、その中から1パターンが丸々出るという。
なので貴様ら全問やれって話だ。
数十問が出題され次の問題が読まれ始めた時、突如ピンポーンという効果音の後に別の声がオーバーラップされた。
「原付の試験において、二段階右折の問題は全て×」
僕達は嘘だろ?まじで?という顔で三度見合った。
そんなのあり?
世の中間違ってね?
とは言えウルトラのお陰で無事合格したし、あとここに来るのは車の免許取りに来るだけだと思うと、凄くホッとした*4

*1:想像であるが神奈川においては二俣川が同じ役割を担っていると思われる。

*2:もちろんウルトラマンとも関係無い。

*3:他の事も書いてあったかもしれないけど、とにかくウルトラが目立った

*4:とか言ってこないだ仕事で行ったという。